姥捨て山

ふきだまりのまち

不道徳教育講座

 

不道徳教育講座 (角川文庫)

不道徳教育講座 (角川文庫)

 

 「あれをしてはいけない」とか「こうしなさい」という書物は沢山あるのだけれども、この本は言ってしまうと「悪いことをしなさい」というような形で書き進められている。

かと言って本当に悪いことしろということを言うているのではない。「大いに嘘をつけ」というタイトルでは以下のように締められている。

本当に嘘をつくにはお体裁をすて、体当たりで人生にぶつからねばならず、つまり一種のケタ外れの正直者でなければならないようです。

未だに自分ができていない事を指摘されてしまうので、どこか少しだけ気持ちが沈むものだとわたしは思う。できないから指摘を受けるのは当たり前なのだけれども、何よりもできないことが多すぎて劣等感を刺激されるから尚更。

読んでいて気持ちがいいのは多分、自分よりもしたがいるのだからまだ大丈夫なんだろうなあという気持ちになるからだと思う。正直その気持ちがいいことであるのか悪いことであるのかはわたしにはわからないけれど

オーダーメイド殺人クラブ

 

オーダーメイド殺人クラブ (集英社文庫)
 

 誰もが中学生の時に一度は患ってしまった中二病とか(特に、ヒロインの「わたしはほかの子とはちがう」と少し高いところからものを見ているところとか)、一度は食らったことがあるだろう仲がよかったと思っていた人からの爪弾きとか、善意が空回りして子供社会の中で大きな迷惑を被ってくる先生とか。

血みどろに興味をもった中学生が殺して欲しいとクラスの冴えない男子にお願いする。一週間くらい世間を騒がせるような、そんな大きなニュースになるような死に方で殺してくれと頼む。なんだかんだで理由を付けて、死から逃げようとする女の子と、思い切り相手を突っぱねて相手を殺さずにいようとする男の子の少し甘酸っぱい青春のお話だった。年を取ってしまえばそんなこともイタイ思い出として終わるのかもしれないけれど、たしかにそこには初恋とか色々なものが血みどろの中にごっちゃごちゃに詰まっているような話。そんな経験をほんの少しだけ運んできてくれるようなお話だった。

綺麗な青春ストーリーというわけでもなければ汚い青春というわけでもなく、どこにでもありがちな青春の少しイタイ一ページ。

ラストはほんの少しだけ切ないけど温かくていい話だった。冴えない男の子の徳川くんが、えっちゃんに伝えた恋の話がすごく温かい。

黒猫の三角

 

黒猫の三角 (講談社文庫)

黒猫の三角 (講談社文庫)

 

 ミステリー小説。

線形代数を知ってるともっと面白い。数字遊びと単位行列と人の思考が少し面白い。

 

ミステリー小説の感想ってどう書けばいいのか全くわからない

なんか何書いてもネタバレになっちゃうよね。

夜の国のクーパー

 

夜の国のクーパー (創元推理文庫)
 

 読了。

自分が見ているモノは実は全て違うものかも知れないし、そうかもしれない。自分が信じているものが本当は全くの別物である可能性もある。自分が真実だと思っているものを疑ってかかれという話。

猫の視点で書かれた自分の国と鉄の国との戦争、敗戦後の話を舞台にしたファンタジーだと思いきや、宮城県からなぜか流れ着いてしまった公務員のおっさんがその話を猫から聞くという、どこか現実と切って切り離せないような不思議な感触。

急加速して終了するような小説ではなくて手首でコロッと転がされるような、淡々とした進み方のお話。勢いで読み切りたいヒトには物足りないかも知れない。

わたしは好きだなあ。

ブクログをつける

多分読書感想文とかも気まぐれできっと続かないだろうから、とりあえず読んだ本だけでもチェック入れていこうと思う。あと感想らしい感想ではないけど、中身を忘れる前に何を考えながら読んだとか、そう言うのだけでも書くようにしよう。

混雑した電車に乗るのにも慣れてきて、ようやく電車の中でちょっとずつ読書ができるようになってきた。中学生の時まではもう本以外友達いませんという感じのすごくかわいそうな奴だったので、読書自体は嫌いではなかったのだけど、高校に入ってから読書する習慣がなくなり、そのまま今に至るという道を経てしまったので、とにかく読む速度が落ちていると思う。本読むときってこんなに遅かったっけって。

早く読めればいいというわけではないのだと思うけれども、文章読み込みの速度が落ちているのはドキュメント見る機会が多くあるので遅すぎるのも考えものかなと思う。とにかく読んで中身を見て外に出せる位あればきちんと読めていることになるんじゃないかなーと。

本当はハードカバーの本を読みたいのだけど、カバンの大きさ都合から文庫になった本しかかっていない。何か面白い本ないかな。最近そればかりかんがえている。

ツナグ

 

ツナグ (新潮文庫)

ツナグ (新潮文庫)

 

 死を描く作品はとても面白いと思う。死後の世界というものを見ている生き物はこの世の中に一匹たりとも存在しないはずだ。描かれる死後の姿、死後の世界というものは作者によって異なるものばかりであるからとても面白いと思う。前に見た想像ラジオも、死んだ男が強い後悔などの気持ちによって成仏できずに木の上にそのまま仰向けになったまま現世でラジオを送っていたし、この作品は死後の世界と生きている人の世界は全く別の世界であると描いている。

死者とまだ生きている人を一生に一度だけ繋ぐことができる使者(ツナグ)と、使者の能力を次の世代へと受け継ぐ意味でのツナグ。

親が死んだあとに親孝行したらよかったという話はよく聞くけれど、生前いくら親孝行しましたといってもいざいなくなってしまったときはきっと後悔するのだと思う。いなくなってしまえばもう、何をやりたい、あれをしたいと思ってもできないから。

死者に会うということは話したりなかったことを話すことができる、一度の後悔を挽回するチャンスになる可能性があるからすがるのかもしれない。しかし、それで満足して帰る人も居れば、余計に後悔するし下手な思いを上乗せしてしまう場合もある。何もかもがいいことばかりではないんだろうなあ。

想像ラジオ

 

想像ラジオ (河出文庫)

想像ラジオ (河出文庫)

 

テレビラジオ新聞インターネットが生きている人たちにあるなら、我々には悲しみがあるじゃないか、と。だからなくなったけれども悲しみを持つ余裕が今はないという人には僕の声は残念ながら届かないし、逆にひょっとしたら生きて悲しんでいる人にもこの番組は届く。

届く、と思いたい。

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